「あい、おはようさん!」「券売機、先ね!」。朝7時の南海通り商店街に響くさばけた声。『なんばうどん』の名物店員、タケさんこと竹村利光さんの1日がはじまりました。黒縁メガネをぎゅっと食い込ませ、左耳にはピアスがきらり。今日もガンガンいくで〜ってな感じで。
コの字カウンターの中で、右手はテボを揺らし、左手は丼を温め、あっちのお客に「いつものね!」、こっちのお客に「ほい、ありがとさん!」。頭の後ろにも目がついているのかと思うほど超人的な仕事ぶり。海外からのお客とみれば「アーユーコリアン? マシソヨ?」と瞬時に語学ギアをチェンジ。そして「タケさんなー、外国語もいけるんやで」とにやり。
「きつねうどん」を注文し、ほいっと出されるまで1分足らず。
山手線の駅名を挙げていくタケさんに相槌を打ちながら、隙を見つけてはご常連に倣ってダイレクトすすり。ほわあ。吐き出す湯気に混じるは、なんとも情けない声。製麺所から取り寄せている麺はぽってりと丸く、期待どおり柔らかく、これまたほわあ。
創業した40年前、120円だったかけうどんがいまだ170円と、昭和感満載の価格にも頭が下がります。
「椅子は高いけどうどんは安いの!」。猛スピードでネギを刻みながらカカカと笑うタケさん。同じエリアで“安い・早い”といえば「天政」「松屋」もあるけれど、ときどき無性にこの鮮烈なマシンガントークを浴びたくなるのです。
ごちそうさまでした。
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