年齢や出身地より、「何うどんが好き?」と聞かれることが多い2016年。大抵「うどんなら何でも!」と博愛主義者ぶるのですが、ごめんなさい……私の心はやはり博多うどんにあるのだと、本日「博多女子本舗」さんのうどんをいただきながら思い知りました。(というか私の中で博多うどんが殿堂入りなだけで、基本的にうどんそのものが大好きです)
▲画像をクリックでサイトへ
こちらは、生まれも育ちも博多と生粋の博多っ子(うらやましい!)の板花さんが「博多うどんを知ってほしい」「東京でも博多うどんを食べたい」という思いから立ち上げられた通販サイト。
今回、ご縁があってうどんを送っていただきまして、ありがたやありがたや。
▲冷凍ゆで麺と冷凍生麺、つゆやごぼう天など
▲左が冷凍ゆで麺。右が冷凍生麺
▲なんか横切りました
博多うどんについては、何度か弊サイトで取り上げているのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、讃岐うどんや武蔵野うどんなどと違って「茹で置き」を基本とするため、とにかくコシがなく柔らかいのが特徴。「なんだ、ただうどんを放置しただけなんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、いえいえ、それで終わらないのが博多うどんの奥深いところ。
独特の粘りやもちもち感――これこそが博多うどん、ひいては九州産小麦の持ち味で、コシが出やすいオーストラリア産のASWという小麦粉や北海道産の代表品種キタホナミとはまったく性格が異なります。
おもしろいもので、うどんというのは茹で上がり直後はあんなにおいしいのに、たったの10分15分ほどで、水分の均一化や水分子の離水などでんぷんのβ化と呼ばれる各作用が起こり、いわゆる“のびて”口あたりが悪くなってしまうんですよね(そういうのが食べたいときもあるけれど)。
この現象は当然、博多うどんでも起こるのですが、ここで活きてくるのが粘性に関わるでんぷんの一種、アミロース。九州産小麦はこのアミロースの含有量が讃岐うどんなどに使う粉と比べて低いため、コシがなくとも独特の粘りやもちもち感を感じることができるんです。
また、本来のタンパク質量も少なく、グルテンの生成量が少ないのもあの食感を生む大切な要素。で、博多女子本舗さんの麺もそういう特徴を持つ九州産小麦粉100%とのことです。
すっかり前置きが長くなり、ごめんなさい。それでは作ります!
▲一回分のセット
今日は、すでに茹でてありお湯でほぐすだけでOKな冷凍ゆで麺を使います(生麺の方は20分ほど茹でて、冷蔵庫で3時間ほど寝かせるとよいそうです。こちらも楽しみ!)。ただでさえ麺が柔らかいので、傷つけないよう慎重にザルにあげます。添付のつゆを注いで天ぷらを乗せたら、じゃ~ん、あっという間に完成です!
つゆ……いや、ちゃんとスメと言おう、スメ(※)にぽわ~んと浮かぶ角のない麺。この呑気な姿が博多うどん好きにはたまらなく愛らしく見えるんです。
(※)博多ではかけつゆのことをスメと言います。
先日の「こがねうどん酒場」の記事ではエロイとか色気とか言いましたけれど、博多うどんに対してはそんな下心はなく、近所の子どもを見るかのような穏やかな心で見ております。うどんを中国から博多に持ち帰ったといううどん神、聖一国師に誓って本当。
それにしても右から見ても……
左から見ても……力が抜けていていいですね~。「達観」や「悟り」という言葉がこの上なく似合う姿に、日々をせかせかと過ごしている自分がみっともなく思えてきます。本当に、博多うどんを前にしたときの心の静けさといったら。
さっそく一箸。柔らかいので、啜るというよりそ~っと口へ運ぶようにしてアムッと。あゝ唇で挟めばはかなく切れるこの感じ、すでにこのブログにも書きましたが、福岡の老舗「みやけうどん」や「かねいし」を彷彿とさせるような、あの幸せな食感そのものです。食べた瞬間、心が博多めがけて飛んでいきました。「お前が来ないならオレが行く!」みたいな。
スメも博多うどんらしい上品なコクと旨みがあって、すばらしく美味。これぞ、ですねえ。
都内でも博多うどんを食べられる、もしくはそう謳うお店は数店ありますが、不肖ながら私の印象では博多女子本舗さんのうどんがもっとも本場の味を表現しているように感じました。
よおし、こうなったら一気に大量注文や~~~! と思いきや現在は完売中で、次回は10月再開・12月発送とのこと。当面はいただいた残りをよおく味わっていただきたいと思います。
【追記】営業再開されました!(2016年10月29日現在)→「博多女子本舗」
ごちそうさまでした。
※化学的な部分に関して1人でひっそり勉強しているため、間違って認識しているところがあるかもしれません。そのときには、正しい情報を教えていただけると大変助かります。